私には小学校1年生の息子がいる。
私は最近まで教員をしていたので、息子の授業参観がとても楽しみだった。念願かなって教室の後ろから見ていると、頼もしく先生の発問に手を挙げている。
「担任の先生、息子を指して!」と親バカな気持ちで見ていたが、なかなか指されない。
息子は算数が好きで、たくさん手を挙げたその授業はやはり算数だった。
教師の立場からしか考えたことがなかった授業参観だが、参観する親の気持ちはこういうものかと思った。
私は教員として20年間勤めたが、長い間「道徳」を専門として研究した。
職場で道徳を専門としているなんてことは一切言わず、家ではいつも息子とくだらないことばかり言ってふざけている。
しかし、夏の個人面談で、担任の先生が息子について「お子さんは道徳の授業の時に、たくさん手を挙げていいことを言ってくれます。」と話していたと、妻が教えてくれた。
私が道徳の授業をしていた時「子どもがこんなことを言ってくれたら、いい授業になるな~。」と思うことがよくあった。
息子がそういう役目をしているなんて、本当に驚いた。
仕事として、道徳の授業についてはずいぶん真剣に考えたものだが、無意識にわが子に移っていたのかもしれない。
もう一つ、
今、息子と一緒にお風呂に入っているが、以前旅行に行く直前に、ホテルの大浴場で一般の人と一緒にお風呂に入る練習をしたことがある。
少し大きくなり、妻と一緒に女風呂に入るのが恥ずかしくなったため、私とホテルの浴場に初めて一緒に入った時があった。
その時、マナーをその場その場で教えるのが大変だったそこで、次の旅行に行く前の日に事前練習をしたのだ。
風呂から上がった後、脱衣所で水がぽたぽた垂れるといけないので、濡れた背中の拭き方を息子に教えた。私がいつも無意識でしている背中の拭き方を息子に伝えることになる。そうすると、
『あ、この吹き方、私が小さいころ私の母に教えてもらったな。』と思い出したのだ。何十年ぶりに。
私はタオルを広げて上から背中に当て、下にタオルを引いて背中をふく。妻はそのようには拭かないそうだ。
とても細かい話だが、私が習慣にしている細かいことの多くを、私の両親から教えてもらったやり方でしみついていて、それを息子にさせているのかもしれない。
親子三代、いやもっと続いているのかもしれない。
そして、これからも続くのかもしれない。